相続した実家や住まなくなった空き家を活用するには、売却や賃貸以外にもさまざまな選択肢があります。そのなかでも駐車場経営は、比較的低コストで始められる土地活用のひとつです。
こちらでは、空き家を駐車場にするのメリットとデメリットについて詳しく解説します。
駐車場経営の一番のメリットは、初期費用や維持費があまりかからないことです。
アパートやマンション経営をする場合、建設費用として数千万円単位の初期投資が必要になります。駐車場にすれば建物を新しく建てる必要がないので、ぐっと費用を抑えることが可能。アスファルトやコンクリートを敷かずにそのまま青空駐車場として貸し出せば、ほぼ整地だけでスタートできるため、初期投資も最低限です。アスファルト舗装をしたり、車止めを設置したりする場合でも、建物を建てるよりは格段に費用を抑えられます。
また、アパートやマンションを建てる場合は修繕費や火災保険などのランニングコストが発生しますが、駐車場は基本的に維持費がかかりません。定期的な清掃や草むしり程度の管理で済むため、ランニングコストを抑えながら土地を活用できます。
アパートやマンションを経営すると、入居者の管理や設備の修繕、クレーム対応など、何かと手間がかかります。
その点、駐車場は基本的に掃除や雑草の手入れをしていればOK。アスファルトを敷いておけば雑草も生えにくくなるので、さらに管理が楽になります。定期的な巡回は必要ですが、賃貸住宅に比べるとかなり手間は少なく済みます。
駐車場経営は「他の土地活用に切り替えやすい」というのもメリットのひとつです。アパートやマンションを建ててしまうと、取り壊す際は多額の解体費用がかかります。しかし、駐車場なら更地のままなので、状況に応じてスムーズに活用方法を変えられます。
例えば、「今は駐車場として運営して、数年後に家を建てる」「いずれ売却したいから、その間だけ駐車場として貸し出す」といった柔軟な使い方もできます。将来の計画がはっきり決まっていない場合でも、駐車場なら選択肢を残しやすいでしょう。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大1/6に軽減されています。しかし、建物を解体して駐車場にすると、この特例が適用されなくなり、通常の税率に戻ってしまう可能性があります。
ただし、空き家が「特定空家」に指定されていた場合は、もともと軽減措置の対象外になっているため、駐車場にしても税額が増えないケースもあります。駐車場経営を考える際には、事前に固定資産税の金額を確認し、負担増加のリスクを把握することが大切です。
駐車場経営は初期費用が少なくて済みますが、収益性はそれほど高くありません。
アパートやマンションなら部屋ごとに家賃収入が入りますが、平面駐車場の場合は1台ごとの駐車料金となるため、どうしても収益の上限が低くなります。そのため、賃貸経営のような「ハイリターン」を求める方には物足りなく感じるかもしれません。
ただし、その分リスクが低いのが駐車場経営の特徴です。建物を建てる場合は初期費用が高額で、空室リスクや修繕費用などの負担もありますが、駐車場なら初期費用を抑えられ、維持管理の手間も少なく済みます。
安定した土地活用をしたい、ローリスクで手軽に始めたいという方には向いている選択肢といえるでしょう。
「いきなり大きな投資をするのは不安」「手間をかけずに安定した収益を得たい」という方には向いている選択肢といえるでしょう。
空き家を駐車場として活用する際には、「月極駐車場」と「コインパーキング」のどちらのタイプにするかを決める必要があります。それぞれの特徴や向いている立地などを見ていきましょう。
月極駐車場は、1か月単位で利用者と契約を交わして貸し出すタイプの駐車場です。借り手が見つかれば毎月安定した賃料収入を得ることが可能。住宅地や、駐車場が不足しているアパート・マンションの周辺では、とくに月極駐車場の需要が見込めます。
精算機やゲートなどの機械が不要で、初期費用が比抑えられるのも大きなメリットです。線を引いて、スペースを区切るだけで始められるケースもあります。
ただし、空き区画が発生するとそのぶん収入が減るため、エリアによっては安定運用が難しい場合もあります。
コインパーキングは、時間単位で貸し出す「時間貸し」タイプの駐車場です。月極駐車場よりも高収入が見込めるうえ、立地によってはさらに大きな利益を生み出す可能性があります。
とくに駅前やオフィス街、商業施設の近くなど、人や車の往来が多いエリアでは、稼働率が非常に高くなりやすく、収益性もぐんと伸びます。
ただし、精算機やロック板などの設備導入が必要になるため、初期投資は月極よりも高額。
また、近隣に競合が多い場合は稼働率が下がることもありますし、そもそも駐車場のニーズが少ない場所では、当然ながら収益化は難しくなります。
駐車場の種類が決まったら、次に考えたいのが「どのように経営するか」です。駐車場経営には主に3つの方法があり、それぞれオーナーの負担や収入の安定性、収益性などに違いがあります。
一括借り上げ方式は、土地を駐車場運営会社に貸し出し、毎月一定の賃料を得るスタイルです。コインパーキング経営で多く採用されており、土地さえ用意すれば、運営会社が機器の設置・管理・トラブル対応まで一括で行ってくれます。
収益の上限は決まっていますが、毎月安定した賃料を得られるため、初めて駐車場経営にチャレンジする方や、管理に手間をかけたくない方におすすめ。初期費用や維持費が運営会社負担となるケースも多く、自己資金が少ない場合でも始めやすいのがうれしいポイントです。
管理委託方式は、駐車場の管理だけを専門業者に任せ、オーナー自身が運営の主体となるスタイルです。契約者の募集やトラブル対応、清掃などを委託できるため、遠方の土地でも安心して運営できます。
管理会社に手数料(賃料の5〜10%ほど)を支払う必要があるため、売上のすべてが手元に残るわけではありませんが、運営にかかる手間は大きく軽減されるでしょう。
ただし、初期費用や設備の導入費はオーナーの自己負担となるケースが多いです。また、稼働率によって売上が変動するため、一括借り上げ方式に比べて収入が安定しにくい点はデメリットといえます。
自主経営は、駐車場の整備・管理・運用まで、すべてオーナー自身で行うスタイルです。管理会社などを介さないため、収益はすべて自分のものになりますが、その分手間もリスクも大きくなります。
料金設定や広告、契約・トラブル対応などを自らこなす必要があるため、駐車場経営の知識や労力が必要です。駐車場経営の知識や経験がある方に向いた方法といえるでしょう。
空き家を駐車場にする場合、まず建物を解体して更地にする必要があります。また、駐車場として使うためには整地や舗装、必要に応じて設備の導入も検討しなければなりません。ここでは、空き家の解体費用と駐車場の整備費用、それぞれの相場について紹介します。
空き家の解体にかかる費用は、建物の構造によって異なります。木造住宅であれば比較的安く済みますが、鉄骨やコンクリート造の場合は費用が高くなる傾向があります。
建物の構造 | 解体費用の目安(1坪あたり) |
---|---|
木造住宅 | 30,000〜40,000円 |
鉄骨住宅 | 50,000〜70,000円 |
RC造住宅 | 60,000〜80,000円 |
たとえば、35坪の木造住宅であれば、100万円~140万円ほどかかる計算になります。建物の広さや立地条件によっても金額は前後しますので、解体業者に見積もりを依頼するのがおすすめです。
さらに、建物の中に家具や家電などの残置物がある場合は、これらを撤去する費用も発生します。一戸建ての残置物撤去費用は、一般的に30万〜50万円程度が目安です。
建物を解体したあと、土地を駐車場として使うには整備が必要です。かかる費用は、どのような駐車場にするか(青空駐車場・月極・コインパーキングなど)によって大きく変わります。
工事内容 | 費用の目安 |
---|---|
整地費用 | 1,500円/㎡ |
砂利敷き舗装 | 2,000円/㎡〜 |
アスファルト舗装 | 3,000円/㎡〜 |
コンクリート舗装 | 5,000円/㎡〜 |
区画線(ライン引き) | 5,000円/1区画 |
車止めの設置 | 5,000〜6,000円/台 |
簡易的な青空駐車場であれば、舗装せずにそのまま貸し出すことも可能ですが、雑草対策や利用者の利便性を考えると、最低限の整備はしておいたほうが無難です。
コインパーキングにする場合は、さらに精算機やロック板などの設備が必要となります。
設備 | 費用の目安 |
---|---|
フラップ板(ロック板) | 10万円/台 |
料金精算機 | 40万〜65万円/台 |
看板・案内板 | 1万〜20万円 |
照明設備 | 3万〜10万円 |
空き家を活用せずにそのまま放置してしまうと、さまざまなリスクや費用負担が発生する可能性があります。特に近年は「空き家対策特別措置法」により、管理が不十分な空き家に対して行政からの指導やペナルティが科されることもあるため注意が必要です。
ここでは、空き家を放置することで生じる主なリスクについてご紹介します。
空き家を放置していると、次第に老朽化が進み、外観が荒れてきます。雑草やごみ、不法投棄が増えることで景観が悪化し、近隣からの苦情やクレームの原因にもなりかねません。
また、不審者の侵入や放火など、防犯面でもリスクが高まります。人の出入りがない空き家は、空き巣や不審火の標的にもなりやすいため、防犯上も注意が必要です。
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大1/6に軽減されます。しかし、空き家の状態が悪化し「特定空家」に指定されると、この軽減措置の対象外となってしまいます。
特定空家とは、「倒壊の恐れがある」「衛生上有害」「景観を損ねる」などの基準を満たすと判断された空き家のことです。指定後は固定資産税が一気に高額になり、場合によっては通常の最大6倍にもなることがあります。
特定空家に指定されたまま放置を続けると、行政代執行により強制的に解体されてしまう可能性があります。解体にかかった費用は、所有者が全額負担することになります。
実際に、数十万円〜数百万円にのぼる解体費用を請求されたケースもあるため、早めの対応が求められます。
空き家の活用は、駐車場経営以外にもあります。立地や建物の状態によっては、ほかの使い道のほうが向いていることも。ここでは、駐車場以外の代表的な活用方法と、それぞれのメリット・注意点について紹介します。
空き家の状態が比較的良好であれば、そのまま一戸建て住宅として貸し出すことが可能です。ファミリー層を中心に一定の需要があり、一度入居が決まれば長期的に安定した家賃収入を得られる可能性があります。
また、住宅として使用されていれば「住宅用地の特例」により、固定資産税の軽減措置も受けられます。
ただし、築年数が古かったり、設備が老朽化している場合はリフォームが必要になることもあります。リフォーム費用は数十万円〜数百万円と幅があるため、初期投資を回収できるかどうか事前のシミュレーションが大切です。
空き家をカフェや雑貨店、サロンなどの店舗として活用する方法もあります。古民家風の趣を活かした店舗づくりは、近年注目を集めており、ニーズもあります。
内装の自由度を認めれば、借り手が自ら改装してくれるケースもあります。ただし、店舗として使用するには住宅には不要な設備(浴室など)を撤去したり、逆に不足している設備を補うリフォームが必要になることもあります。
また、退去後に原状回復が難しい点には注意が必要です。
近年は訪日外国人観光客の増加により、民泊として空き家を運用する例も増えています。自治体への届け出や営業日数の制限など、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいた運営が必要ですが、観光地に近いエリアでは需要があります。
代行業者に運営を任せることで、手間を抑えて収益を得ることも可能です。ただし、不特定多数の利用があるため、設備の損傷リスクや近隣住民とのトラブルに配慮する必要があります。
空き家をそのまま「収納スペース」として貸し出すトランクルーム経営も選択肢の一つです。とくに住宅街や都市部の住宅密集地では、一定の需要が見込めます。内装は最低限の防犯・防湿仕様に整える程度で済むため、初期費用を抑えやすいのも魅力です。
一方で、トランクルームは「事業用建築物」として扱われるため、住宅用地の軽減措置は適用されません。固定資産税や都市計画税が高くなる可能性があるため、事前に収支シミュレーションを行っておきましょう。また、防犯カメラや夜間照明などの設備を後回しにすると、盗難やクレームといったリスクが高まるおそれもあります。
空き家を解体した後の土地を活用し、太陽光パネルを設置して売電収入を得る方法もあります。住宅用地としては活用しにくい土地でも、日当たりがよければ発電事業としての可能性があります。
ただし、初期費用やメンテナンス費用、天候による収益の変動、災害リスクなども踏まえて、長期的な視点で計画を立てる必要があります。